職場のモラル・ハラスメント > 日本心理学会でのワークショップ
去る9月10-12日に、日本の心理学研究における最大の学術大会である日本心理学会が慶応義塾大学で開催されました。全部で110近くのワークショップの中に、『産業領域における自己愛性パーソナリティ障害の臨床と研究』というものを見つけたので、参加しました。
ある臨床心理士が中心になって主催されたものでしたが、基礎研究中心の日本心理学会において、実質「職場のモラル・ハラスメント」に関する臨床研究が取り上げられたことに、少しびっくりすると共に、職場の自己愛人間による被害が多くなっていることを裏付けているように感じました。
ワークショップでは、複数の臨床心理士によって3つの事例が、その加害者(上司)が「自己愛的パーソナリティ」を持っているのではないか、という観点から紹介されました。
彼らは臨床心理士であり、私なんかよりもずっと臨床経験もあるので、こんなことを言うのは正直気が引けるのですが、このサイトなどを通じて、数多くの職場のモラルハラスメント体験(=自己愛人間による攻撃)を垣間見ている私としては、「その事例で加害者を自己愛性格とするのは無理がないだろうか?」と思われるのもありました。
ワークショップにおいても、最後に、ある参加者が、『心理の臨床家は、企業や経営について知らない人が多いので、普段から日経新聞などに目を通すなど、企業というものを理解することに努めて欲しい』という提言をしていましたが、強く同意するところがあります。
というのは、真の自己愛性格かどうかを見抜くには、「職場での行動」ということも十分に考慮に入れなければいけません。えてして職場では、自己愛的な振る舞いをしがちです。何故なら上下関係の中で、部下に対しては、それが許されると勘違いしがちだからです。また、過大なストレスを抱えてしまっている時には、みんな自己中心的になり、権力が少しでもあれば、その下の人間に自己中心的にあたるのは、ある意味、至極当然のことです。
また、良い意味でも悪い意味でも、上下関係の「けじめ」が根強く残っている日本の職場において、この上下関係を尊重できず、(悪気がないとしても)忌憚のないコメントを行ってしまう部下が多いのも事実なのです。
従って、職場における加害者が置かれた状況や、被害者の言動を考慮に入れず、一般的な自己愛の定義に従ってしまうと、ハラスメントを行う人間の多くが、自己愛になってしまいます。私の実感では、真の自己愛は、職場においても200-500人にせいぜい1-2人位です。しかし、この少数の人たちが、何人もの部下を、退職や病院に送り込んでいるので、被害は結構多かったりします。
偉そうなことを書きましたが、日本に比べて職場における自己愛研究が進んでいるアメリカの文献も多く参考にしたうえでのコメントです。

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