モラル・ハラスメント > モラル・ハラスメントの心理社会的要因
モラル・ハラスメントを提唱したイルゴイエンヌは、2006年2月に初来日し、東京大学で講演を行いました。そこではっきりと表明していたのは、「モラル・ハラスメントは、個人主義の産物である」ということです。
これには2つの意味を含んでいるそうです。個人主義が、ハラスメントを助長している側面と、個人主義が、ハラスメントへの抵抗力を弱めているという側面です。
イルゴイエンヌによれば、個人主義によって、他人の立場でものごとが見ることができなくなっている人が増えている。だからこそ、自分の主義主張をとおすために、他人と衝突する。これがハラスメントを助長しているというのです。
同時に、個人主義によって、私たちは孤立してしまっており、周りとの連帯感が希薄になっています。つまり、きちんと自分の存在を認知してもらっている、繋がっている、という感覚こそ、ハラスメントへの抵抗力となるのに、それが少なくなっていることから、他人の行為に敏感に反応し、ぼろぼろになってしまう。
講演を聞きながら、非常に説得力があると感心しておりました。
私は、ここに「ストレスの蔓延」という考え方を持ってくると、さらに説得力が高まると考えています。ストレスとは元来、生物が生き残るための「闘うか逃げるか」反応であり、突然のストレッサーや、蓄積されたストレスは、攻撃性という形で他者に向けられる傾向があります。
個人主義そのものは、決して悪いものではありません。しかし、そこにストレスによる攻撃性が加わることで、まわりとの軋轢を生み出す可能性が高まるのです。
価値観の多様化、インターネット・メールによるコミュニケーション不足、個人主義など、ストレス社会を推し進めている要因は多数ありますが、この流れが変わらない限り、職場におけるモラル・ハラスメントは減少しない、それどころか、今後、ストレスの蔓延が進行し、攻撃的な社会が到来します。それに従いモラル・ハラスメントも「急激」に増えていくというのが私の予測です。
今、私たちには、そのような攻撃的な社会を耐え抜く「しなやかさ」が求められています。
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